尾崎未来・BEAT-POP・SAILORQ2のホームページ BABYPOP

「BABYPOP」は漫画家尾崎未来と個人サークル「BEAT-POP」「SAILORQ2」「完全犯罪(PERFECT CRIME)」の情報発信サイトです。

・9/2(日)こみっく★トレジャー32では 5号館チ19ab「BEAT-POP/立呑屋」でお待ちしています
定額配信・違法配信・読み放題サービス

定額配信・違法配信・読み放題サービス

「漫画・コミック」についてだけど、ちょっと知っておいて欲しい事があります。
多分ほかのジャンルでも、制作者側なら誰でも思っている事。
描いている側からの意見として知っていて、分かって欲しい事です。
出版業界が印刷から配信へ、大きく舵を切ろうとしている今だから、読者に気にして欲しい事です。

今この時代に、ネット上には「漫画読み放題・無料」と称して、
著作者や出版社が許可をしていない違法な読み放題サイトがあふれています。
読者側にしてみれば「本なんてコンビニや本屋に行けばタダで立ち読みできるんだから、
ネットで無料配信してるなんて今更何に目くじら立ててるんだ」と思われるでしょう。

これまで、例え立ち読みをしても本当に欲しい本はお金を払って手に入れていましたよね?
けれどネットの違法配信では、人目も時間も気にすることもなく、
欲しいだけ全てを手に入れることが出来てしまいます。

では違法配信「元」はなぜタダでそんなサービスしているのかって?
人気のコンテンツによってそのサイトビューをあげれば広告料が手に入る
=国内の広域指定○○団や、海外から日本の金を吸い上げたい人たちが
濡れ手に粟で大喜びして運営しているんですよ。
ちなみに最大手と2番手の違法配信サイトのサイトビュー数は、
「Yahoo!」をトップとする日本のランキングのベスト10に入っています。

しかし、それを描いている側は、「描く」ことで「生活の糧」を得ている「人間」なんです。
自分の能力を目一杯使って、一本の作品を作っている、あなたと同じ人間です。
それが例え原稿料が安くても、自費出版で赤字になってしまうレベルの同人誌でも、
世界で何億冊が売れる単行本でも、描き手はあなたと同じ、ご飯を食べて生活をしている人間です。
どれだけ自分の本が売れたかによって自分の生活が潤い、それが次の作品へのモチベーションになる。
あなたが「読んでみようかな」と思う作品を作り出すのは、クラウドアプリでもボットでもなく、
間違いなく努力を惜しまない「人間」なんです。

加えて出版社は、そんな描き手のモチベーションを維持する為に
対価として原稿料を払い、権利を守る努力をしています。

しかし「違法配信をしている側」や
それを「タダで手に入れること(それに罪悪感を感じていてもいなくても)をいとわない人たち」によって、
作り手側の「生活の糧」は減り続けています(実際に作家活動を維持できなくなる人がいるんです)。
それはすなわち描き手のモチベーションが下がっている事に他なりません。

「これ以上頑張っても生活できない」と、たくさんの描き手のモチベーションが下がりきり、
新しい作品が生まれなくなるかもしれない。

「そんな事は読み手側の知ったこっちゃない」
「自分は読みたい本が読めさえすればタダがいいに決まってる」
あなたはそれを罪悪感なく正しいことと言い切れますか?

作り手側は今の時代に自身を守る為に、
出版社や正式に購読料を支払ってくれる配信会社と共存の道を探っています。

同人誌を作っている個人作家には、
「違法配信元を監視し削除申請を行うサービス」を提供する正規配信会社への登録という道が開けました。

そして「定額配信・読み放題サービス」が
これから多くの作家に多大な恩恵をもたらすであろうと思います。
一人一人のコンテンツ頼みの単品販売だけでは現在の有名作家は生き残れても、
これから出てくる作家や新たなアイディアで再チャレンジしようとしている作家は
切り捨てられてしまいます。
しかし切り捨てられそうなその中にあなたが「これ読んどけば良かった」と
後悔するほどの作品が生まれる可能性は、決して低くはありません。

弱肉強食の漫画・コミックの世界でも、全くの最初からの強者はほぼいないのです。
だから弱者を大切に育てていく中で、伸びていく芽が見つかるのです。
印刷物が主流の時代は、週刊・月刊などの各漫画雑誌がそれらの育成畑の役割を果たしていました。
しかしこれからの配信中心の時代ではその役割を担うのは
「定額配信・読み放題サービス」になるのではないでしょうか。

このサービスのメリットには「コンテンツの保護」と「最低限の成果の保証」があげられます。
「コンテンツの保護」は「違法配信元を監視し削除申請を行うサービス」にほぼ等しい物です。
個人では交渉が難しい違法配信に対する削除申請を企業単位で行うという事です。
「最低限の成果の保証」は、「読み放題サービス」コンテンツに含まれた作品の作者には
その全体の売上がそれをまかなえる程度にプラスで有る限り、原稿料が与えられます。
また、次の作品を描くチャンスが出来ます。
(もちろん個別の売上が低すぎる場合はその限りではありませんが。)

ただ、そのサービスを新たに各出版社で立ち上げるには相当なコストがかかります。
おまけにそれぞれの出版社がおのおの勝手に立ち上げても先細りで個別撃破です。
しかしネット販売の場さえあれば、新規作品の収穫も望めるのです。

そこにアマゾンから魅力的なコンテンツが立ち上がりました。

「うちのコンテンツに客を誘導してくれるなら、
新規で立ち上げる読み放題サービスに参加してはいかがですか?
サービスの宣伝料としてうちの取り分大バーゲン(期間限定で)しちゃいますから」

もちろん出版社にとっては純粋に新たな販路拡大を狙っての事です。
企業なんですから利益追求は当然です。
ネット出版の巨人、アマゾン「Kindle Unlimited」を橋頭堡として、
ネット配信での安定基盤を構築できると踏んだわけですね。
しかし漫画・コミックの出版社は、これまで述べてきた使命感や期待値も一緒に
「Kindle Unlimited」に託した側面があります。
そりゃ「巨人アマゾンに逆らってまで違法配信しないだろう」位は思うでしょう。

ところが、人気の雑誌を投入して「さあこれからウェブコンテンツを育てよう」
又は「ウェブに移行しよう」という時に
「取り分の見積もり間違えたんで、うちが損するコンテンツは外させてもらったから。」
と一方的にアマゾンから通達されたわけです。

「アマゾンが日本の市場を読み間違えて青天井な支払額を設定したのが間違い」
という報道もされており、全くその通りだとは思います。
しかし、アマゾンに寄りかかってしまった出版業界の非も、自身に認めてもらいたいものです。

ではこれからどうやって違法配信の魔の手から
描き手と漫画・コミックの文化を守っていけば良いのでしょうか。

実は実効力の有無という意味では、
日本には音楽や動画・アニメの違法配信を禁じる法律はあっても

漫画・コミックの違法配信を禁じる法律は有りません!

何と、そこから!? ・・・実はそうなんです。
業界間の連携のとれなさ、著作権の委託、等々・・・
法律一つ作るだけで保護される作り手の権利が、守られていないのが現状です。

実は出版業界は音楽・映像業界と比べて、違法配信に対する啓蒙活動を
全くと言っていいほど行っていません。
何故か?

・・・「違法配信禁止を声高に叫ぶと、それを知らなかった人たちが、
『タダで手に入るならタダがいい!』って言ってそっちに流れるのが怖いから」
・・・「騒ぐよりは寝た子を起こすな。」
なんです。

これが業界がまとまって啓蒙活動に踏み切れない原因なんです。
何てこったい!
本末転倒も甚だしい。
・・・ならば今できる事は何か?

それでも業界間の協力と、できる限り最大手の配信サイトとの
「定額配信・読み放題サービス」の構築だと思うのです。

自身の利益を妨害する違法配信サイトに対し、正規配信サイトは
出版業界間のしがらみなく、自身の利益を守る為
「違法配信禁止」を声高に発し続けるでしょう。
それが啓蒙につながります。

「万引きはダメ、法律で禁じられてるんだよ!」と言われて
「へー、万引きっていうものがあるんだ、じゃあやってみよう」
と、そこまでする人がどれだけいますか?(・・・そりゃ、いないとは言わないけど)
そこまで日本国民は馬鹿で無責任で自己中ではないと、信じています。

そして、それでも著作者を守る為に議員立法を訴えて
出版業界の有志が陳情を繰り返している事実はあるのです。
その為に動いている国会議員も少なからずいるのです。
皆さん、「選挙権」無駄にしないで下さい。

ちょっとだけ、色々首を突っ込んだせいで、
ちょっとだけ、内側を知ってしまいました。

でも、「クールジャパン」なんて聞き心地のいい言葉だけで
「日本の漫画・コミック文化は世界に誇れるものだ!」なんて
安易に思わないで欲しいのです。
みんなで、今の状況に少しでも危機感を持って欲しい・・・
そんな気持ちでこんな長文を書きました。

この文章は著作権フリーです。
最後までお読み頂き、有り難うございました。

記、サークル管理人

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